平林千牧総長が語る「ダイナミックな改革力で前進する法政大学」

総長 平林千牧

本年四月一日付で新総長に就任した平林千牧総長は、一九九九年から常務理事を務め、清成忠男前総長とともに本学の改革を推進してきました。平林総長に、今後の取り組みとビジョンについてお話を伺いました。

改革力の法政大学を標榜する

三期九年にわたった清成忠男前総長時代に、本学では様々な改革が進められました。平林総長は、これまで、常務理事として数々の改革に携わってこられたわけですが、今後、新総長として、どのような取り組みをされるのでしょうか?

清成前総長が取り組んでこられた改革は、従来の法政大学のイメージを一新させるという、実に立派な成果を挙げています。つまり、二十一世紀の大学としての骨組み・外側をしっかりと造っていただいたわけですから、次は、中身の充実ということにになります。

それは、本学が「開かれた法政21」のビジョンの下で二十一世紀の社会にふさわしい教育プログラムを創り出していくこと、その教育プログラムのクオリティを保証することにほかなりません。

今、十八歳人口が減少しているにもかかわらず、むしろ大学数は増加しているという奇妙な現象が日本の高等教育で発生しています。なぜ、こういうことが起こるのでしょうか。一つ推測されることは、どの大学も、実はまだ、社会のニーズに適切に対応できていないために、「既存の大学は十分競争可能な相手であり、新規参入の余地がある」と見られているのではないかということです。

つまり、既存の大学は今、否応なしに「良い大学づくりのための競争」に参加せざるをえない状況にあるということになります。そして、その大学自体の独自性や差別化を打ち出すことにによって、厳しい競争に勝ち抜いていかなければならないのです。本学は現在、「改革力の法政大学」として注目されていますが、もし、この取り組みを停滞させてしまったら、そうした競争に間違いなく負けるでしょう。

既に高等教育における進学率が五十%以上に達している現在、我が国の大学は、「マス」から「ユニバーサル」の段階に移行しつつあると言えます。

そこで本学は、教育のクオリティを保証するために、何をしなければならないかということですが、まず、個々の学生に、きちんとした人生観や人生設計を持たせ、生きる目的をはっきり意識させること。そして、一人ひとりの満足度を高めていかなければなりません。

しかも、本学の真の改革力が問われるのは、二十一世紀の社会に求められる人材の育成という目的において、ごく一部の学生だけではなく、「入学した全ての学生について、適切な対応ができている」かどうかという点にあります。そのことによって、評価の高い大学づくりが実現するものと考えています。

ダイナミックに教学改革を実現

次に、教学改革についてお伺いします。評価の高い大学づくりを実現させる改革力という視点から、今後、教学改革について、特に重要な取り組みとは何であるとお考えでしょうか?

第一は、入学時からの学生諸君に対するキャリア教育の重視です。そのためには、実学的教育の前提となるような、人間教育としての充実した教養教育も重要になってくるでしょう。ですから、教養教育の位置付けを見直し、より充実させていくことも、しっかりと考えていかなくてはなりません。

そして、これは同時に、ファカルティ・デベロップメント(教員の職業能力開発)が必然的なものとなってくることも意味しています。

第二に、国民教育的に普及した高等教育の中身を考えた時に、学部を前期教育課程、大学院を後期教育課程として位置付け、そこに一貫性を持たせなければならないということです。

「知識基盤社会」(knowledge based society)への転換が展望される二十一世紀の大学は、高度多機能教育機関(Advanced Multiversity)の構築を目指さなければなりません。

ですから、大学は今後、社会のニーズに応えるだけでなく、社会に向けた新しいイノベーション=革新を展望するメッセージを、積極的に発信していくことも必要になります。本学が二〇〇四年四月に開設した専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科の名称は、まさに本学の教学改革の方向性を象徴するのではないかと考えています。

第三は、大学の教育研究能力の改革ということになりますが、今、本学の大学院には、非常に能力の高い社会人がたくさん学んでいます。いかにして本学の教育研究能力を、社会人の再教育や生涯教育と結び付けるかということが、今後の重要な課題の一つとして考えられます。

国立大学の独立行政法人化という動きの中で、今後、私立大学は国立大学との競争にさらされることも覚悟しなくてはなりません。いかにも重装備の国立大学とは違って、私立大学は比較的軽装備です。それだけに私立大学には、社会の動向をいち早くキャッチして、素早い動きで勝負する戦略的視点を持つこと、それを常に強化しておくことが必要になってきます。

本学では、これまで、新しい五つの学部を次々と設置してきたわけですが、幸い、法人部門の改革、教学改革ともに、他大学に比べて順調に進んでいます。だからこそ、二十一世紀型の人材を養成するための新しい教育プログラムを、比較的短時間に準備することが可能なのです。

社会から評価される大学づくりは、ダイナミックな改革力によってこそ実現するでしょう。

三キャンパスの動向と展望

市ケ谷・多摩・小金井の三キャンパス各々の動向と、これからの展望については、どのようにお考えでしょうか?

まず、本学の教学改革における工学部改革の重要性という点から、小金井キャンパスでの取り組みがキイポイントとして挙げられます。二〇〇〇年四月に発足した情報科学部は、いわば工学部の一部のファンクションを独立させた形でしたが、昨年度はシステムデザイン学科、来年度は生命機能学科という新学科を発足させつつ、現在、デザイン理工学部(仮称)設置準備など抜本的な工学部改革が動き出しています。

今後、工学部の再編をスピードアップさせつつ、小金井再開発第二期工事によってキャンパスのリニューアルが進められる予定です。

一方、多摩キャンパスは、昨年二十周年を迎えました。ここに、二〇〇〇年四月に設置した現代福祉学部、そして大学院は、郊外型キャンパスの利点と地域との結び付きを生かしつつ、強力なスタッフを擁して、良質の教育を提供することで、非常に高い評価を得ることができました。この現代福祉学部の成功は、多摩キャンパスの充実ということに対して、新しい展望を開いています。また、経済・社会二学部とも、各々心学科を二学科増設し、一層二学部の改革を進めています。

市ケ谷キャンパスでは現在、隣接する嘉悦学園校舎の取得や、新たな複合施設の建設によって、過渡的整備が進められています。今後、人口減少社会における都心回帰現象の動向を見ながら、市ケ谷キャンパスのアクセスの良さを重視しつつ、新しいキャンパス設計に積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。その際、ITネットワークによって三キャンパスを結んだ、サテライト授業の充実ということも考えていくことになると思います。

さまざまなネットワークの強化

キャンパスのネットワークということを挙げられましたが、最後に、法政大学のさまざまなネットワークとコミュニケーションという側面についてお話しいただけますか。

まず、国際戦略という面では、現在、本学はアメリカのサンフランシスコに法政大学アメリカ研究所を持ち、一九七〇年代半ばに英国に設置したロンドンオフィスを本年、再開させます。いわば、アジア、アメリカ、ヨーロッパの三点を結んだ国際的ネットワークの構築によって、欧米の進んだ教育プログラムや先端的な研究をいち早くキャッチすることをねらっているわけです。それを本学の教学改革に反映させていくことによって、国際的評価に耐えうる大学づくりを目指しています。/p>

また、高大ネットワーク化が重要です。学生として非常にインパクトあるグループの本学の三つの付属校との一体感を持ちながら、教育の一部ネットワーク化によって、連携を一層強化していきたい。その一方で、外に開く教育プログラムについても、強化していくことを考えています。つまり、各地の高校と連携を取りながら、本学の教育プログラムに興味を持つ高校生の積極的な受け入れを重視するということです。

さらに、私立大学にとって、後援会や卒業生組織とのコミュニケーションは、とりわけ重要なものであると考えています。私が最も強調したいことは、大学にとって、常に「卒業生は重要な財産」だと答えられるようでなければならないし、卒業生が、法政大学という言葉を聞いた時に、何か胸がときめくような、元気が出てくるような存在でありたいということです。

大学と地域、社会との恒常的なコミュニケーションのためにも、後援会や卒業生組織とのコミュニケーションが絶えず取れる体制が必要です。一つの重要なテーマとして、卒業生とのネットワークの強化に取り組みたいと考えています。

平林千牧 総長
平林千牧 総長

(ひらばやし・ちまき)1935年東京生まれ。1960年法政大学経済学部経済学科卒業。1964年同大学院社会科学研究科経済学専攻修士課程修了。同博士課程を経て、1971年法政大学経済学部特別助手。1972年同助教授。1980年同教授(現在に至る)。1992~1993年法政大学経済学部長。1997~1999年法政大学大学院議長。1999年学校法人法政大学常務理事。2005年4月1日同総長に就任(任期は3年間)。専攻は経済学史。文部科学省大学設置・学校法人審議会特別委員(学校法人分科会)、日本キャリアデザイン学会常務理事、大学基準協会理事、私立大学連盟理事

  1. Managerial Accounting
    2007.04.21/06.02
  2. Financial Decisions
    2007.06.09/07.28
  3. Organization and Management
    2007.08.04/09.22