これが聞きたい! 「IP電話の現状と将来について」

コメンテーター : 八名和夫 工学部教授

八名和夫 工学部教授 ●(やな・かずお)1951年東京都生まれ。早稲田大学理工学部電気工学科を経て、1979年同大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程修了。早稲田大学理工学研究所奨励研究生、順天堂大学医学部助手を経て、1984年本学工学部電気工学科専任講師に着任。1992年同教授。この間、1989年に米国マサチューセッツ工科大学客員助教授を務める。専攻は情報処理工学。デジタル信号処理法の開発とその応用を研究テーマとする。2002年法政大学アメリカ研究所(米国サンフランシスコ)の所長に就任。著書に「ニューロ情報処理技術」(共著)など。
新しく登場したIP電話サービスが話題を集めています。「場合によっては無料で電話をかけられることもある」というこの電話サービスは、特に、国際電話や国内の長距離電話の通話料が気になる人には、かなり気になる話題のようです。現在、法政大学アメリカ研究所の所長を務める工学部電子情報学科の八名和夫教授に、IP電話の現状と将来について伺いました。

IP電話の芽生え

録音したメッセージをディジタル化した音声ファイルとし、電子メールの添付書類として送るもので、電話のような同時・双方向性はありません。

インターネット上で同時性を考慮した双方向のマルチメディア通信を行うシステムとしては、一九九三年に米国コーネル大学でCUSeeMeというソフトウエアが開発されました。音声のみならず動画像も送受信できる、いわゆるテレビ電話ソフトで、現在のIP電話の走りとも言えるものでした。ネットワークの利用状況に応じて、途切れ途切れに音声が聞こえるなど、実用的な通信とは言えないにしても、音声が情報ネットワークを通じて伝わったということには大いに驚かされました。

IP電話とは

以来、急速なネットワークの広帯域化が進むとともに、音声をIP(Internet Protocol=インターネットの通信規約)ネットワークに乗せて伝送するVoIP(Voice over Internet Protocol)技術の発展によって、現在では実用的な商用サービスが数多く存在します。

IP電話には、大別して、ネットワークに接続されたパソコン(PC)同士で通話を行う〈PC to PC〉、PCから通常の電話にかける〈PC to Phone〉、および通常の電話同士の通話で途中伝送路にIPネットワークを使う〈Phone to Phone〉という三つの方式があります。

一方、電話からPCへ電話をかける〈Phone to PC〉方式については、現在、PCへの電話番号付与の問題があるため、サービス開始はこれからという状況です。しかし、基本的な接続についての技術的な問題はほぼ解決されており、総務省はインターネット上のPCあるいは専用IP電話機に、050から始まるIP電話番号を付与することを決定しています。実際に、本年九月二十七日から、電気通信事業者に対して、050から始まる電話番号の取得申請を受け付けていますので、遠からずこのサービスも開始されることでしょう。

IP電話の問題点と今後の展開

ITU(International Telecommunication Union=国際電気通信連合)やIETF(The Internet Engineering Task Force=インターネット技術特別調査委員会)などが、現在、IP電話の規格の標準化を進めていますが、解決すべき問題点も多く残っています。

現状では、「インターネットを中継に使うサービスでは、通話品質がネットワークの状態に左右される」、グローバルIPアドレスを使うことから、「ユーザ数が爆発的に増えた場合IPアドレスの枯渇を招く」「発信元を偽った電話により犯罪者のトレースが困難となる」などセキュリティー上の問題等が指摘されています。

しばらくは従来の電話サービスと種々のIP電話サービスが混在する過渡的な状況が続くことでしょう。しかし、現在Everything over IPという標語に縮約される全ての通信をIPネットワーク上に統合する動きが主流となっています。いずれ、文字、音声、画像、動画等全ての通信がIPネットワークに乗って世界中を行き交うようになることでしょう。電話機が携帯IP通信端末に置き換わり、低コストで世界中どこにいても容易に地球上の誰とでも携帯テレビ電話でコミュニケーションが可能となる日も、そう遠くないはずです。

ちなみに、このインタビューも、米国の法政大学アメリカ研究所と法政大学キャンパスをIP技術によって接続したIP内線電話を使って行われたものです。

[表1] IP電話の各種サービス
方法 呼び出し側→受け側 必要な環境など 拠点間の接続:通話品質など 利用方法
1-a
Phone to Phone
電話→電話
通常の電話サービスとほぼ同じ 専用のIPネットワーク:通常の固定電話レベル [事業者接続番号+相手の電話番号]をダイヤルする
インターネット:実用レベルを満たす アクセスポイントに電話接続の後、[認証および暗証番号+相手の電話番号]をダイヤルする
1-b
Phone to Phone
電話+DSLモデム→電話
PC:特別な機能を持たせたDSLモデムに電話機を接続する
ネットワーク環境:ブロードバンド常時接続
インターネット:実用レベルを満たす DSLモデムに接続した電話機から[相手の電話番号]をダイヤルする
2
PC to Phone
パソコン→電話
PC:インターネット接続機能を持ち、音声入出力が可能なもの。一般にエコー回避のため、ベッドフォン・マイク一体のハンドセットを用いる。受話器型のハンドセット(USB接続)を用いると通常電話の利用感に近い
ネットワーク環境:DSLなどのブロードバンド常時接続が望ましいが、モデムを使用したダイアルアップ接続でも利用可能
インターネット:実用レベルを満たす サービス提供業者にユーザー登録し、webページから、あるいは専用ソフトを用いてダイヤルする(例:左の図を参照)。独立にクレジットカード決済する場合、バナー広告をクリックすれば無料で利用できる場合などがある
3
PC to PC
パソコン→パソコン
PC:2と同様のパソコンで、電話通信専用ソフトを導入する
ネットワーク環境:2同様
インターネット:実用レベルを満たす
※高性能スピーカー、マイクロフォンおよびサウンドカードを使用すれば、通常の電話より高音質で通話できる場合も
音声:画像通信ソフトにより直接相手のIPアドレスを入力して通話(ビデオチャットも可)、サービス提供業者にメンバー登録してメンバー間で専用ソフトを用いて通信するなどの方法がある。あらかじめ登録したメンバーがオンラインになると表示が現れてチャットや音声通話が始められるシステム(メッセンジャーサービス)が普及しつつある
  1. Managerial Accounting
    2007.04.21/06.02
  2. Financial Decisions
    2007.06.09/07.28
  3. Organization and Management
    2007.08.04/09.22